星降る丘から健康便り:胃がん

消化器内科部長内視鏡センター長 徳原 満雄先生

今号は、胃がんについてお話します。我が国では近年、年に約12万人が胃がんに罹患し、約5万人が亡くなっています。死亡率が約40%と世界と比較すると少ない傾向にあるのは、全胃がんのうち、早期胃がんの占める割合がわが国では60%を超えているという事実です。これは我が国の早期胃がん診断率の高さを意味します。
 胃がんの予後を決定しているのは、その病期(ステージ)です。早期胃がんはステージⅠに属しますが、その5年生存率は約90%と極めて高いのです。
 ステージⅠとは胃がんの浸潤が胃壁の浅い層に留まっている状況です。ステージが進むほど予後が悪くなります。5年生存率はステージⅡで約60%、ステージⅢで約40%と下降し、ステージⅣでは7%と極めて悪くなります。
 日本の胃がん患者のピロリ菌陽性率は98%と極めて高く、ほぼすべての胃がんがピロリ菌由来と考えられます。故にピロリ菌を除菌し、経年的に胃カメラを行い、発生した胃がんに対して、内視鏡的治療(ESD)もしくは外科手術を行えば胃がんで亡くなる患者を激減させることが可能となります。がん浸潤が粘膜までであれば、胃の機能が温存されるESDのみで治療可能です。
 次回は、大腸がんについてお話したいと思います。