おもろいんやで歴史漫談:「特別史跡」 百済寺跡


「特別史跡」百済寺跡




考古学研究家 植田正幸




 「史跡」という言葉をご存じですか。そんなもん知ってるわ!とツッコミが入りそうですね。
 ちなみに、世界文化遺産である堺市の巨大古墳・仁徳天皇陵や、百舌鳥古市古墳群の応神天皇陵は史跡ではないのです。これらは皇室の祖先の墓ということで、宮内庁が管理する個人のお墓扱いになります。
 史跡は1919年制定の「史蹟名勝天然記念物保存法」に基づき決められ、その中でも「特に学術上の価値が高く、我が国文化の象徴たるもの」が特別史跡となります。全国に1795もの史跡がありますが特別史跡はたった62か所。そのうち大阪府には2つの特別史跡があり、1つは大阪城、もう1つが1952年大阪で初の特別史跡になった、枚方市が全国に誇る「百済寺跡」です。渡来系氏族の百済王敬福(くだらのこにきしきょうふく)らが建立したといわれています。
 敬福は陸奥守として東北に赴任しており、東大寺大仏完成後の鍍金不足に困惑する聖武天皇に、陸奥小田郡で産金し献上。『続日本記』には「陸奥国初めて黄金を貢る、ここに幣を奉りて畿内七道の諸社に告ぐ」とあり、歓喜した政府は天平感宝、天平勝宝と2度も改元。大伴家持は万葉集に「天皇の御代栄むと東なる陸奥山に金花咲く」と詠みました。
 東大寺大仏建立は当時、国家挙げての大事業でした。その功労者ゆかりの特別史跡・百済寺跡、ぜひ散歩がてら訪ねてみては?







考古学研究家 植田正幸
埋蔵文化財発掘調査担当を経て、考古学・歴史講座を行う。 考古学・古代史探訪サークル顧問・専任講師 「生涯青春塾」北河内歴史講座を担