「何もしない」という治療 平成21年6月1日号

 4年余り続いた連載も今回で最後になります。長年にわたるご愛読、ありがとうございました。さて、今回は、一風変わった眼科の治療についてお話したいと思います。
 皆さんは、眼科の治療と言うと、点眼や内服、手術を思い浮かべると思います。でも、実は「何もしない」ということも、立派な治療なのです。「何もしない」と、「何も診ない」ということは異なります。危険因子の除去、進行予防などの対応も大切な治療なのです。
 例えばよく耳にする緑内障。明らかに緑内障の方はもちろん積極的な治療が必要ですが、緑内障の可能性が否定できないグレーゾーンの方もたくさんいます。この方たちに必要なことは、積極的な治療は行わないけれど経過を見ていくこと、すなわち緑内障性の変化が生じていないかどうかを定期的に観察していくことが何よりも大切なのです。
 また、たくさんの目薬をさしているのに、症状が一向に改善しない、それどころか目が腫れたり、充血したり、かすんだりして受診される方がいます。目薬にも副作用や、個人的に合う合わないがありますし、たくさんの目薬をさしている場合は、その中のどれが不具合の原因なのか、見極めるのは困難です。そこで、いったんすべての目薬を中止し、白紙の状態に立ち戻します。
 このように、「何もしない」ということは「治療しない」ということとは全く異なり、とても立派な治療だということをご理解ください


きたの眼科:北野保子院長
診療所では、場合により在宅医療、往診にも対応。電話予約、電話相談にも応じる。星ヶ丘厚生年金病院、そのほかの病院との病診連携を行っている。
枚方市中宮西之町15-18-101 TEL072-890-2929

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