進行がんで根治不可能な状態と告げられるのは、とてもつらい瞬間です。その後の抗がん治療は治癒でなく進行を遅らせるのが目的となりますが、副作用が限界を超え、体の余力を失う前に、思い切って緩和ケアに専念する姿勢は、早期からの緩和ケアという概念と同等に大切です。
 生活を重視し、薬物治療・心理的サポート・専門的看護ケア・リハビリなどを複合的に行う緩和ケアへの転換で、抗がん治療中よりむしろ元気になる例を数多く経験します。残念ながらその回復にも限界はあります。しかし苦痛が緩和され心と体の余裕を取り戻し、身辺整理やご家族との過ごし方を前向きに考えられるようになることには大きな意義があります。
 今やがん医療の質は、抗がん治療だけでなく緩和医療、在宅支援をも含む幅広い視点で行われているかどうかが問われています。
 がんの進行は、時に驚くほど急激に患者さんの自律性を奪います。自分にはもう価値がないと気力を失う方を支える難しさを感じる一方で、人に任せることを受け入れ、感謝やユーモアを失わない姿からは、自律性の新たな意味や勇気を頂きます。意識のない患者さんも、常に最善を考えるという責任と役割を周囲に与えてくださいます。終わりゆくことに深く向き合う時、生の意義はむしろ浮彫となり、哀しみから喜びを見出す強さとなるように感じます。がんと戦うすべての方にエールを送らせて頂き、連載を終えたいと思います。
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緩和ケア科主任部長 塚原 悦子先生
日本ペインクリニック学会認定専門医 日本緩和医療学会暫定指導医 日本麻酔学会麻酔指導医
星ヶ丘厚生年金病院
枚方市星ヶ丘4-8-1 TEL072-840-2641

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