涙は、いにしえの海 平成19年2月1日号

 目が乾燥してゴロゴロする、あるいは冷たい風に当たると突然涙があふれてくるなど、この季節、涙に関する訴えが多く見受けられます。そこで今回は、涙に関するお話をしようと思います。
 アニメで、魚が目をパチパチさせたり涙を流したりするシーンをよく見掛けますが、実際には魚は瞬きもしないし、涙も流しません。その必要がないからです。
 生物は、海で誕生し、長い年月をかけて、すみかを陸地に移してきました。この間、エラは肺に、ヒレは手足にと、陸上生活に適した体に変化していきましたが、まぶたや、涙腺などの構造もそれに合わせて出現したものです。海の中では、海水に守られて、目の表面は絶えず潤っています。しかし陸上では、乾燥を防ぐための涙が必要になってくるというわけです。涙の成分が、原始の海の成分に似ているといわれていることも、興味深いです。
 そんな人の涙も、目の乾燥を防ぐ以外に、使われることがあります。そう、悲しい時やうれしい時に出てくる涙。こちらの方は、なぜ出てくるのかはっきり分かっていません。しかし、涙は人間をより人間らしくしているといえるでしょう。
 いずれにせよ、涙はほんのわずかな量でありながら、日々分泌されては、出て行くという絶妙なバランスを保っています。このバランスが崩れた時、最初に書いたような症状が出てくるのです。
 というわけで、次回は、この涙のバランスについてのお話をします。


きたの眼科:北野保子院長
診療所では、場合により在宅医療、往診にも対応。電話予約、電話相談にも応じる。星ヶ丘厚生年金病院、そのほかの病院との病診連携を行っている。
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