悠久の楽器 創り出す匠 バイオリン工房 「クレモナ」

悠久の楽器 創り出す匠
バイオリン工房
「クレモナ」岩井 孝夫(いわい たかお)
さん

繊細な工程を経て珠玉の楽器に



オーケストラや独演で、伸びやかで華やかに曲を奏でるバイオリン。弦の振動が本体の空洞を支える「魂柱」を介して表・裏の板に伝わり、共鳴し、表板の孔から迫力の音色を響かせます。
枚方市津田元町にある古民家のバイオリン工房「クレモナ」。ここで、岩井孝夫さん(66歳)は、バイオリン、チェロなど弦楽器をすべて一人で作っています。岩井さんが学生の頃はビートルズやフォークソングの流行でギターの全盛期。幼少時より工作が好きで、ギター演奏より作る方に興味を持った岩井さんは、高校卒業後に信州のギター工場に就職。しかし流れ作業での生産でなく、一人ですべてを作るバイオリンの職人に出会い、工法に魅せられ、かつてストラディバリなど偉大な名工を生みだしたバイオリン製造の街・イタリアのクレモナへ単身渡り、11年間バイオリン製法を学びました。
帰国後は故郷の亀岡市で工房を開業し、のちに高槻市に移転。岩井さんの作った楽器は多くの演奏者に奏でられ、製作コンクールで数々の賞を受賞、高槻市からは教育文化功労賞も。
2013年には偶然見つけた津田の古民家を気に入り、工房を再移転しました。「イタリアでの修業時代には、作ったバイオリンを使い物にならないと師匠に叩き壊されたことも」と、笑いながら話す岩井さんは、今はバイオリンの材料になる松や楓を庭木や鉢植えで日本風にアレンジし愛でながら、静かな環境の中で、ほぼ一年に6本のペースで製作を続けています。 ピアノや管楽器と違い、バイオリンなどの弦楽器はその真価を発揮するのが数百年後と言われます。演奏を繰り返す中で、表裏の板の厚みの違いや経年の変化がもたらした奇跡なのか、その秘密は解明されていません。行動力と、縁に恵まれ、素晴らしい技術を身に着けた岩井さん。彼が作り上げた数々のバイオリンも、はるか未来に最高の音色を響かせることでしょう。
インスタグラムでは岩井さんの日々の様子も @iwai_gallery 

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