星降る丘から健康便り:「神経リハビリテーション」をご存知ですか?
リハビリテーション士長 稲村 一浩さん
昭和の時代は、脳卒中で脳細胞が傷害されると皮膚の細胞とは違って再生しないので治らない、動かない手足は動かない、少しでも動くなら動く運動を繰り返し動かして筋力を増やすというリハビリテーションが主流でした。
ところが近年の脳・神経科学の発展により、脳細胞一つ一つではなく、脳細胞のネットワークが運動や感覚、記憶、情動などの総合的な活動にとって大切であることが分かりました。その背景に、動物実験の結果がヒトでは応用できなかった脳の機能が、CTやMRIなど脳の画像技術の発達で、ヒトの動作・思考の脳の活動が見える化できたことです。
つまり、高度に進化したヒトの脳は、ヒトの脳でしか仕組みが解明されなかったのです。そのため、脳卒中の神経リハビリテーションでは、ヒトの脳の仕組みを解明した理論を基に色々な治療法が提案されています。
一例として、動物とヒトの脳活動の大きな違いに、「鏡を見て自分を認識できる」があります。ヒトだけが、自分自身を具体的なイメージで思い浮かべて再現したり、新しい運動を想像して運動学習できます。体操選手が世界初の技ができるようになるのはヒト特有の脳の機能です。
つまり、脳細胞が脳卒中で傷害を受けて、今までの脳のネットワークでは動かなくなっても、まずは脳の中の自分自身を動かすイメージで運動することで、残っている脳細胞が新たなネットワークで新たな運動として再学習できます。「意識して運動することは大切」なのです。